個別映画評
ドット・ジ・アイ
DOT THE I

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年代 | 2003年 |
国 | イギリス/スペイン |
時間 | 92分 |
監督 | マシュー・パークヒル |
脚本 | マシュー・パークヒル |
音楽 | ハビエル・ナバレテ |
出演 | ガエル・ガルシア・ベルナル、ナタリア・ベルベケ、ジェームズ・ダーシー、トム・ハーディ、チャーリー・コックス |
意味不明なタイトルからは話の内容はうかがうべくもなく、今ではレンタル店の棚からも消えてしまいそうな本作だが、何とこの題名は"dot the i's and cross the t's"なる慣用句で“細部まで注意をは払う”という意味らしい。つまり、[i」と[t」の形が似てることから、「i」の上の点“ドット”と「t」の“横線”を間違えるな。そう、このタイトルは登場人物の細かな動きに注意を払え!、との観客への「メッセージ」でもあるようだ。ことほど左様に、一見“ラブストーリー”風にはじまるオープニングから、話しが進むにつれて次第に思わぬ方向へ転がり出す中盤、さらには最近のTV番組ではないが、“スカッと”胸のすく終盤の“点”(ドット)まで、まず見る者の眼を離させない。
結婚が決まったナタリア・ベルベケのスペイン娘が、ヘン・ナイト・パーティ(独身最後の女子会)の席上、その会の決まりで“キスの相手”を選ぶことになる。で、彼女が選んだのが偶然そこに居合わせてビデオカメラを手にした青年のガエル・ガルシア・ベルナルだった。席のみんなが見守る中、二人はぎこちなく唇を重ねる。ところが、ゲーム感覚で始まったそのキスが、思わぬ長きに及んだ時、ハッと我に返った二人は愕然とする。そこに彼らは互いの胸に燃え上がる熱い炎を見ていたのだ。
物語はこうして幕を開けるが、その発端となるパーティのシーンなど、どちらかと言うとヨーロッパ的な絵作りが楽しめる。それはこんなシーンだ。客でいっぱいの室内の中央の席に陣取った娘たちが、全員おなじおかっぱ頭に口髭で、しかもみな黒い背広にネクタイ姿という異様さだ。そんな彼女たちがグラス片手に「カンパーイ」なんてやってる図は、ほほえましさと奇天烈さで妙に印象に残ってしまう。そしてもちろん、そんな娘の心変わりに苦悩することになるのがもう一人の主人公ジェームズ・ダーシーという訳だ。かくて消すに消せなくなった三つの炎は、絡み合ったまま三角にねじれて激しく燃え上がることになる……。
練られた脚本とテンポよいカット割りが見ものの好編だが、題名の分かり辛さで損しているように見えるものの、実は劇中で語られる次のようなセリフにタイトルの意味が隠されているようだ。それは「キスは“愛”の文字を完成させる最後の“点”(ドット)」だとか、「“点”は全てを計算し尽して最後に打つ“終止符”(ドット)」などだ。そうは言っても作品の「顔」でもあるタイトルはやはり「分かりやすさ」がベストだろう。とはいうものの、ボクはこの「顔」も好きだ。
(2015/03/18)